「パラサイト 半地下の家族」は、アジア映画でアカデミー賞作品賞など4部門を受賞した話題作です。
かつてない社会現象を巻き起こしたこの作品は、韓国の格差社会を象徴していると言われています。
この記事では、映画に盛り込まれた韓国の格差社会を象徴するシーンについて解説しています。
パラサイト半地下の家族は韓国格差社会に対する皮肉?
パラサイト半地下の家族のどういった描写が、韓国格差社会を皮肉っているのでしょうか?
まずリアルな韓国の状況から確認してみましょう。
韓国格差社会の実情
韓国は大変な競争社会、格差社会です。
映画のタイトルにもある「半地下」は、もともとは北朝鮮の挑発が活発だった1960年代後半に、
有事の時に避難場所として使うために設置を義務付けられた避難場所でした。
韓国の圧縮成長により首都ソウルの人口が急増。
住居不足に対応するため、避難場所だった半地下が密かに住居として貸し出されるようになりました。
半地下は、現在の韓国社会において、貧困家庭が息をひそめて暮らす典型的な住居となったわけです。
数年前の調査では約37万世帯が、このような半地下の家に住んでいます。
下水が逆流しないようトイレは一番高いところにあります。
ソウルの高級住宅街カンナム(江南)のすぐ近くにこうした地区があるのです。
アカデミー賞作品賞の「パラサイト」の背景となった、韓国のリアルな格差社会をリポート。 pic.twitter.com/D9iVQnI6zw
— ロイター (@ReutersJapan) February 14, 2020
対照的な家族を描いて皮肉ってる?
この映画では、韓国の格差社会を象徴するシーンがいくつもあります。
2つの対象的な家族の状況を描くことで、韓国格差社会を皮肉っているんですね。
ひとつずつ解説していきましょう。
<住居>
パク社長の邸宅は、美しい坂道を登った先にさらに階段があるという高地にあります。
一方、キム家が暮らすのはもともとは避難場所だった半地下です。
丘の上の大邸宅と半地下の住居
まさに超格差社会韓国の現実です。
「パラサイト 半地下の家族」をみた。
上と下。上から流れてくる雨は巡り巡って下に貯まる。ゾッとした。
ポンプのない半地下のトイレは下水に流すために床より高く作るが、彼らはそのトイレよりも下に居る。#映画 pic.twitter.com/c7f2D8aK6M— 秋月ムロ (@akitsukimr) January 13, 2020
<知識と教養>
韓国では、英語だけでは足りず、三か国語以上を身につけないと良い職にはつけないという話もあります。
パラサイトでもパク社長の娘や息子が幼い頃から家庭教師を付けて備えていたり、
ギウのエリート大学生の友人が留学したりと、
富裕層やそれを目指す人々は、子供にせっせと語学を身につけさせ、よりよい留学先を見つけるのに必死です。
一方のキム家も教育を放棄している一家ではありません。
- ギウやギジョンのネットから吸収する知識
- 母親チュンスクはハンマー投げの選手
- 父親ギテクのパク社長を満足させる運転テクニック
など、器用な一家にもかかわらず、一家揃って熾烈な競争から脱落してしまいました。
- 父ギテクは、経営していたチキン屋やカステラ屋をつぶれてしまった。
- 母チュンスクは、スポーツ選手として大成しなかった。
- 長男ギウと長女ギジョンは大学入試に失敗。
生まれ育った環境の違いで、韓国社会ではこぼれ落ちてしまうのです。
<匂い>
パク家の長男ダソンが、ギウがパク家にやって来たとき、インディアンの弓矢を打ちました。
そして、キム家4人のにおいが全員同じであることにも気付いていましたよね。
また、パク社長と奥さんの会話でギテクの匂いについてこんな表現をしていました。
- 古い切り干し大根のような匂い
- 煮洗いした布巾の匂い
- 地下鉄のなかの匂い
自分達は、
- 古い切り干し大根も食べない
- 布巾は常に新しいものを使用する
- 地下鉄なんか乗らない
と言っているわけです。
川の上流(富裕層)の水はきれいで、下流(貧困層)に行けば行くほど泥水になって臭い。
そのような暗示が込められているのでしょう。
[映画短評]『パラサイト 半地下の家族』格差が”匂い”に表れる!/相馬 学 https://t.co/m2OiIpFRp4
— シネマトゥデイ (@cinematoday) December 16, 2019
<階段>
この映画では、階段=階級ということを感じます。
パク家は、家は高台にあり、玄関からリビングへの動線も登りですし、基本的に階段を上がるシーンしか描かれてません。
一方、キム家は垂直な坂道を下って半地下へ帰ったり、パク家の地下室へ行ったりします。
階段(階級)を富裕層は登り続け、貧困層は下り続けるという意味でしょう。
パラサイト 半地下の家族
これから雨の日には思い出す映画の一つになった。
半地下家族側の気持ちで観るか、
裕福家族側の気持ちで観るかで、
感想は違ってくるのかな?観た後は、家の匂いや体臭が
不安になってルームフレグランスや
新しい香水を買いまくってしまった!
あの豪華な家に住みたい。 pic.twitter.com/ogu77hDsK8— ☆hirondelle☆ (@hirondelle33112) June 29, 2020
皮肉な描写が多いのは富裕層?貧困層?
それでは、皮肉な描写が多いのは富裕層でしょうか?貧困層でしょうか?
全体的に富裕層を皮肉ったシーンが多かったですよね。
パラサイト半地下の家族は、悪知恵の働く貧困家族が富裕家族にパラサイトする映画です。
つまり、富裕家族が騙される描写が多いわけです。
その代表が美人の奥さんでしょう。
奥さんが会話の中にちょいちょい使う拙い英語などもその良い例でしょう。
- ミニョク先生を褒める時に使った”ブリリアントですよね”
- イズ・イット・オーケー・ウィズ・ユー
- とにかくを”エニウェイ”
- ジェシカに夫を紹介する時に”ディス・イズ・ドンイク”
- ジェシカ・ナイス
これらは、韓国人の学歴志向を皮肉っているシーンと思われます。
「パラサイト 半地下の家族」圧巻だった。
なんと言ってもチョ・ヨジョン。
彼女にはベスト奥さん賞を送りたいと思います。 pic.twitter.com/YnYzFgHFAo— たっツん (@kuderenyat) January 18, 2020
ただ、ラストの衝撃の出来事の後、
最終的にパク家は、誰も傷つくことなく、おそらく通常の生活に戻ったでしょう。
一方のキム家は、長女は亡くなり、父親は犯罪者となり地下に潜ることになってしまいました。
そして、長男の妄想で終わる最後のシーン。
ここに貧困層の悲しい宿命が、シニカルに描かれてましたね。
まとめ
- 韓国は大変な競争社会、格差社会である
- 数年前の調査では約37万世帯が、半地下の家に住んでいる
- 「パラサイト 半地下の家族」は韓国の格差社会を象徴する映画である
興味のある方は、ぜひ観てください。
最後まで読んでいいただき、ありがとうございました。
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